
歯科衛生士が1人辞めると230〜450万円超の損失に|離職コストの実態と防止策
本記事は、歯科医院の採用・定着に関わる情報をsoeasy buddy for dental+AI編集部がまとめたお役立ちコラムです。公表データをもとに、歯科衛生士の離職コストの実態と、定着率を高めるための視点をお届けします。
採用して育てた歯科衛生士が辞めてしまう——このとき発生する損失は、採用コストや育成コストだけではありません。再採用コスト、欠員期間中の機会損失、そして連鎖離職リスクまで含めると、1名の離職が医院経営に与えるダメージは想定をはるかに上回ります。
本コラムでは、歯科衛生士の離職の実態をデータで確認し、離職コストの全体像と防止策を整理します。
歯科衛生士の離職はどれくらい多いのですか?
歯科衛生士の離職・転職は業界全体で非常に高い頻度で発生しています。日本歯科衛生士会の調査データが示す現実は、多くの院長が感覚的に知っていること以上に深刻です。
1. 転職経験率は76.4%
日本歯科衛生士会「歯科衛生士の勤務実態調査報告書(令和2年3月)」によると、歯科衛生士の76.4%が1回以上の転職経験を持っています。つまり、現在働いている歯科衛生士の4人に3人が、すでに転職を経験しているということです。
2. 常勤の在籍期間中央値はわずか4.2年
厚生労働省の衛生行政報告例をもとにした推計では、歯科衛生士の常勤在籍期間の中央値は4.2年とされています。看護師の在籍期間中央値7.7年を大幅に下回る数字であり、歯科衛生士の定着の短さが際立ちます。
3. 転職を検討している割合は64.7%
同調査では、「転職を考えていない」と回答した歯科衛生士はわずか35.3%。つまり現在働いている歯科衛生士の約65%が、何らかの形で転職を念頭に置いているということになります。
「今の職場に特に不満はない」と思っているスタッフも、条件のよい求人が来たときに揺らぐ可能性がある——それが歯科衛生士採用市場の現実です。「来てほしいときだけ採用を考える」では手遅れになるケースが多く、日常からの定着施策が不可欠です。
歯科衛生士が辞める主な理由は何ですか?
離職理由を把握することは、防止策を立てるうえで最初のステップです。日本歯科衛生士会の調査では、常勤・非常勤で離職理由の傾向が異なります。
4. 常勤スタッフの離職理由トップ3
1位:経営者との人間関係——院長との信頼関係が崩れると定着が難しくなる。一方的な指示・評価への不満が積み重なることが多い
2位:給与・待遇への不満——昇給の仕組みが不透明・頑張りが評価されないと感じると転職に動きやすい
3位:仕事内容のミスマッチ——入職前に聞いていた業務内容と実際が異なる、専門性を活かせないなど
5. 非常勤(パート)スタッフの離職理由1位
非常勤スタッフの離職理由1位は「結婚・出産・育児」です。ライフイベントへの対応として産休・育休制度や復職しやすい環境を整えることが、潜在層の掘り起こしとあわせて重要なポイントになります。
出典:日本歯科衛生士会「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」令和2年3月 / 令和7年3月
歯科衛生士1人の離職でいくらの損失が発生しますか?
離職による損失は「採用コスト+育成コスト+再採用コスト+機会損失」の合計で捉えることが重要です。それぞれが積み上がると、想定以上の金額になります。
損失項目 | 新人(2年以内離職) | 中途(1年以内離職) |
|---|---|---|
採用コスト(無駄になる分) | 15〜35万円 | 18〜45万円 |
育成コスト(無駄になる分) | 100〜200万円 | 30〜70万円 |
再採用コスト | 15〜35万円 | 18〜45万円 |
欠員期間の機会損失(3ヶ月×衛生士1名分売上) | 月30〜80万円×空白月数 | 同左 |
合計損失試算(欠員3ヶ月の場合) | 230〜450万円超 | 150〜300万円超 |
※コストは業界推計値。機会損失は衛生士1名担当患者数(月100〜200名)をもとに試算。
6. 見落とされやすい3つの追加リスク
連鎖離職リスク:1人の離職が残存スタッフの業務負担を増大させ、次の離職を誘発する悪循環につながりやすい
患者流出リスク:特定の歯科衛生士に信頼を置いていた患者が、その方の退職をきっかけに他院へ移るケースがある
採用コストのインフレ:離職・再採用を繰り返すと求人市場での医院の評判が低下し、次の採用がさらに困難・高コストになる
定着率を高めるためにできることは何ですか?
離職コストは「防ぐこと」が最も費用対効果の高い対策です。転職を「考えていない」割合がわずか35.3%という現実を踏まえると、日常的な定着施策の積み上げが欠かせません。
7. 早期離職サインを見逃さない仕組みをつくる
退職の意思が固まってから初めて気づくのでは手遅れです。日常の業務参加状況・コミュニケーションの変化・発信量の減少などから、スタッフの状態変化を早期に察知できる仕組みが重要になります。
8. 承認・評価の見える化で心理的安全性を高める
常勤離職理由の上位にある「経営者との人間関係」や「評価への不満」に対して最も効果的なのは、日常的な承認と透明な評価の仕組みです。頑張りや貢献を数値・コメント・スタンプで可視化することが、スタッフのモチベーション維持と定着率改善につながります。
soeasy buddy for dental+AIには、スタッフの貢献度・活用度を偏差値として可視化する機能があります。状態変化を早期に察知して声かけしたり、承認マネジメントをデジタルで日常化したりすることで、早期離職率の改善が期待できます。離職率を7ポイント改善(45%→38%)できれば、10名規模の歯科医院で年間0.7名の離職削減・160〜315万円の損失回避が見込めます。さらに採用差別化(リファラル採用年1名)で15〜45万円、育成期間短縮(新人年間2名・1/3短縮)で66〜200万円の削減を合わせると、年間の合計削減・損失回避効果は241〜560万円/年と試算されます(試算前提:10名規模歯科医院。効果は組織環境・導入方法により異なります)。
よくある質問
離職コストの中で最もインパクトが大きいのはどの項目ですか?
欠員期間中の機会損失が最も大きくなりやすい項目です。歯科衛生士1名が担当する患者数を月100〜200名とすると、欠員3ヶ月で90〜240万円規模の機会損失になります。採用・育成コストが「かけたお金が無駄になる損失」であるのに対し、機会損失は「稼げたはずなのに稼げなかった損失」であり、経営上のインパクトは同等以上です。
「転職を考えていない」スタッフが急に辞めることがあるのはなぜですか?
不満が表に出ていなくても、条件のよい求人や職場環境の急変(院長交代・スタッフ間のトラブル・業務量の増大など)が引き金になって離職に至るケースがあります。「今は大丈夫」という安心感より、「辞めたいと思わせない日常」を継続的につくることが重要です。
定着率を上げるために今すぐできることは何ですか?
最も即効性が高いのは「スタッフへの承認を日常化すること」です。感謝・労い・頑張りへのコメントを定期的に伝えることで、心理的安全性が高まり離職リスクが下がります。評価制度・昇給基準の透明化、産休育休取得実績の整備なども、中長期的な定着率向上に有効です。
まとめ:離職を「防ぐ」ことが最も費用対効果の高い経営投資
歯科衛生士の転職経験率は76.4%、転職検討中は64.7%——在籍中のスタッフも常に選択肢を持っている:日常からの定着施策を持たない医院では、いつ離職が発生してもおかしくない状況にある
新人が2年以内に離職すると230〜450万円超の損失——採用・育成への投資がすべて無駄になる:連鎖離職・患者流出・採用コストのインフレという追加リスクも加わると損失はさらに大きくなる
「採用に勝つ」より「定着させる」方が圧倒的にROIが高い:転職を検討していないスタッフはわずか35.3%。承認・評価の見える化と心理的安全性向上が最も費用対効果の高い定着投資
離職コストを意識すると、「採用費を削ろう」ではなく「定着率を1割改善しよう」という発想に変わります。スタッフが長く働き続けたいと思える職場をつくることが、採用コスト・育成コスト・離職コストすべての問題を根本から解決する近道です。

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