本記事は、ウェビナー「スタッフがすぐ辞める医院と10年続く医院の決定的な違い」の内容をもとに、soeasy buddy for dental編集部がまとめたお役立ちコラムです。
取材協力:くらた歯科医院 院長 倉田 友宏 先生

「会食も研修旅行も医院負担。給与も他院より高いはず。それなのに、なぜスタッフは辞めてしまうのだろう」——そう感じたことはありませんか。

日本歯科衛生士会の「歯科衛生士の勤務実態調査」(令和2年3月)では、勤務先を変わった経験のある歯科衛生士は76.4%にのぼります。多くの医院が採用と離職を繰り返すなかで、スタッフが10年続けて働く医院には何があるのか。長野県で開業継承から10年、スタッフの自走する組織をつくり上げてきたくらた歯科医院・倉田友宏先生の実践から、その違いを紐解きます。

意外なことに、倉田先生の話に共通するのは「何かを新しく始めた」ではなく、「院長主導で行うことをやめた」というエピソードでした。

なぜ福利厚生が充実していてもスタッフは辞めるのですか?

院長主導で用意した福利厚生は、スタッフにとって「やらされごと」になりやすいためです。定着する医院は、イベントや研修旅行の企画をスタッフ発案に委ねています

倉田先生の医院でも、かつては忘年会や研修旅行を院長から企画していました。しかし現在は、院長側から「やろう」と言うことを一切やめています。

  • 歓迎会や研修旅行は、スタッフ側から「やりたい」と提案があったときだけ実施する

  • 提案があれば、院長は時間とお金を出すことに徹する

  • 実際に、昨年はスタッフ発案で大阪への研修旅行が実現。新人が入れば歓迎会の企画もスタッフ側から挙がってくる

良かれと思って院長が日程まで組んだイベントは、スタッフには「参加しなければならない業務の延長」に映ることがあります。「与える福利厚生」から「スタッフが企画したくなる環境」へ。この転換が、定着する医院の最初の違いです。

給与を上げればスタッフは定着しますか?

給与だけでは定着につながりにくい、というのが倉田先生の実感です。給与水準よりも、「時間の余裕」と「疲弊しない働き方」のほうが継続勤務を左右します。

倉田先生は医院が忙しくなってきた時期に、「体制を変えて忙しくなる分、給与を上げる」という選択肢をスタッフに相談したことがあります。返ってきた答えは、給与アップよりも今の働き方を守りたい、というものでした。

「給料が良くなっても、休みの日が疲れを取るだけで終わってしまう。仕事の後に出かけたり、料理をつくったりする余裕がなくなるなら続けられない」——スタッフとの対話から、倉田先生は「お金を出せばいいわけではない」と気づいたと語ります。

「てっきり給料が理由だと思っていたら、違った」——ウェビナーの中で倉田先生もそう振り返っています。実際、歯科衛生士の退職理由としては、金銭面だけでなく人間関係や労働環境、研修・教育体制への不満が挙げられるといわれています。給与は他院との比較材料にはなっても、毎日の消耗をカバーしてはくれません。ベースアップを検討する前に、「スタッフの時間の余裕を奪っていないか」を見直すことが先決です。

スタッフ教育はいつ・どのように行えばよいですか?

残業や休日を前提にした教育は、もう成立しません。診療時間内の空き時間と、スキマ時間にスマホで学べる仕組みを組み合わせるのが現実的です。

「休み時間などない。終業後も日をまたぐまで勉強するのが当たり前」——倉田先生自身、そういう時代に育った世代です。しかし今は働き方改革もあり、学習時間の考え方そのものを変えたといいます。

  • 本人が望んで残って勉強するのは自由。ただし医院からは強制しない

  • 「このセミナーを聞きたい」「ここに行きたい」と自分から手を挙げたスタッフは、医院として送り出す

  • 診療中の空き時間ができたら、指導担当と一緒にマニュアルを見ながら学ぶ

  • マニュアルはスマホでいつでも見られる形にしておき、昼休みや自宅でも自然に目に入るようにする

この方針に変えたことで、一人前になるまでの期間が2年から3年へ延びる面はあった、と倉田先生は率直に認めます。それでも「そういうもの」と割り切る。熱意のあるスタッフは自ら学んで早く成長しますし、疲弊して辞めてしまえば教育投資はゼロに戻るからです。

新人の教育担当は誰に任せればよいですか?

特定のベテランに固定せず、毎年スタッフの中から指導担当を決めるローテーション制が効果的です。理由はシンプルで、「教える側に立った人がいちばん伸びる」からです。

倉田先生の医院では、新人が入るたびに「誰が指導担当につくか」をスタッフ間で話し合って決めています。院長が指名するのではなく、新人の性格やキャラクターを見ながら、相性のよい担当をスタッフ自身が選ぶのです。

  • 若手から中堅に差しかかるスタッフに、責任ある指導役を任せる

  • 指導担当は毎年入れ替わるため、数年で「全員が教えられる」組織になる

  • 新人の理解が足りない箇所に気づいたら、指導担当と一緒にマニュアル記事をつくる——教材づくりそのものが指導側の学びになる

もうひとつの鍵が、マニュアルを「完成品」にしないことです。セメントなどの使用材料は半年程度で変わることも珍しくありません。紙のマニュアルでは更新が追いつかないため、倉田先生の医院ではデジタル化して全員が編集できる体制にし、新しい材料や手順の変更をどんどん追記しています。2年前から変わっていないマニュアルは、教育の仕組みが止まっているサインといえます。

朝礼やミーティングは本当に必要ですか?

形式化した朝礼・ミーティングは、「院長の不満タイム」になりやすいのが実情です。思い切って廃止し、日々の運営をスタッフの自主運営に切り替えるという選択肢があります。

倉田先生の医院には、見学に来る先生から「朝礼から参加したい」と意気込んだ連絡が入ることがあります。返す言葉は決まって「うち、朝礼ないよ」。かつては朝礼やミーティングを行っていましたが、振り返ってみると、上の立場の人が一方的に話し、他のスタッフは「早く終わらないかな」と聞いている時間になっていたそうです。現在は朝礼を行わず、次のような運営に変えています。

  • 日替わりのチーフが、その日の予約・ドクターへの割り振り・スタッフ配置をすべて計画する

  • 誰がどの時間にどのサポートへ入るか、スタッフ全員が予約表を見ながら自分で考えて動く

  • 「この体制では動きづらい」と感じたスタッフは院長に提案し、「では来週から一度やってみよう。合わなければ戻せばいい」と試す

院長がトップダウンで決めれば早いかもしれません。しかしそれでは「やらされている感」が残ります。自分たちで決めた仕組みだからこそ、スタッフは責任感を持って動き、結果として早く帰れて疲れない——倉田先生の医院では、毎日のフォーメーション表をスタッフ自身がホワイトボードでつくるまでになっています。

ここで押さえておきたいのは、これが小さな医院だからできる話ではないことです。くらた歯科医院はユニット9台・歯科衛生士14名体制、1日240〜250人の患者さんが来院する規模。それだけの現場が、院長の号令なしで毎日回っているのです。

ギリギリの人数と余裕のある人員配置、どちらが医院のためになりますか?

目先の利益ではギリギリの人数が有利に見えますが、わずかな余剰人員を持つほうが「休める体制」が生まれ、結果として定着につながります

スタッフを1人多く雇うコストは決して小さくありません。歯科衛生士の平均年収は約400万円です(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年)。それでも倉田先生は、人員に余裕を持つことを選んでいます。

  • 体調不良のとき、「今日は病院に行ってから遅れます」「休ませてください」とチャットで気兼ねなく言える

  • 誰かが休んでも、全員が予約表を細かくチェックしているため「今日はこの体制でいこう」とチームで吸収できる

  • 子育て中のスタッフの急な欠勤も「そういうもの」として受け止め、お互いさまの文化が回る

休めない職場は、どれだけやりがいがあっても続けられません。そして今は、辞められてから採用し直すことが年々難しくなっている時代です。歯科技工士の学校養成所数は平成3年度の72校から令和2年度には47校まで減少し、入学者数も減少傾向にあります(厚生労働省「歯科技工士の養成・確保に関する検討会報告書」令和2年3月)。歯科衛生士の採用競争も厳しさを増すなか、「1人分の余裕」は贅沢ではなく、辞めない医院への投資と捉えるべきかもしれません。

スタッフが自走する医院を、どうすれば仕組みにできますか?

ここまでの5つの「やめたこと」に共通するのは、知識や情報を院長や特定のベテランが抱え込まず、医院全体でいつでも参照・更新できる状態にしていることです。この土台を支えるのが、スマホで完結する情報共有の仕組みです。

倉田先生の医院でも活用いただいているsoeasy buddy for dental+AIは、こうした「スタッフが自走する医院づくり」を次のような場面で支えます。

  • スマホで見られる動画マニュアル:昼休みや移動中のスキマ時間に、見たい箇所だけサッと確認。AIが自動でチャプターを付けるので、長い動画でも必要な場面にすぐ飛べます

  • 全員で更新できるフォルダ:材料や手順の変更をその場で追記。新人の「わからない」をきっかけに、指導担当と一緒にマニュアルを育てられます

  • 朝礼に代わる情報共有:タイムラインに連絡事項を投稿すれば、休みのスタッフにも同じ情報が届き、「言った・言わない」がなくなります

  • AIアシスタント「buddyくん」:医院に蓄積した投稿をもとに、スタッフの質問に答えます。「先輩に聞きづらい」場面でも、自分で調べて解決できます

投稿が増えるほどAIが医院のことを学び、スタッフの自己解決を支えられるようになる——知識が個人ではなく医院の財産として積み上がっていく設計です。

よくある質問

福利厚生を増やせば、スタッフの離職は防げますか?

院長主導で増やすだけでは効果が出にくいのが実情です。会食や研修旅行そのものが悪いのではなく、「誰が企画したか」が重要です。スタッフ発案の企画を院長が支援する形に変えることで、同じ施策でも受け止められ方が大きく変わります。

スタッフ3〜4人の小規模医院でも、マニュアルの仕組みは必要ですか?

少人数の医院ほど有効だと倉田先生は指摘します。小規模医院では特定のスタッフに業務が集中しやすく、その人が突然休んだり辞めたりしたときの立て直しに非常に苦労するためです。日頃から知識を残しておくことが、いざというときの備えになります。

残業前提の教育をやめると、成長が遅くなりませんか?

一人前までの期間が2年から3年に延びる可能性はあります。ただし、熱意のあるスタッフは自ら学んで早く成長しますし、疲弊による離職で教育投資がゼロに戻るリスクを考えれば、長期的には「辞めない環境」のほうが教育コストを抑えられます。

まとめ:スタッフ定着は「引き算」から始まる

スタッフがすぐ辞める医院と10年続く医院の違いは、特別な制度の有無ではなく、「院長が手放せているかどうか」にありました。

  • 福利厚生・朝礼・現場の采配を院長主導で行うことをやめ、スタッフの発案と自主運営に委ねる

  • 給与よりも「時間の余裕」と「休める体制」を優先し、疲弊しない働き方を守る

  • 教育は個人の頑張りではなく仕組みで支える——ローテーション指導と、全員で更新し続けるマニュアル

「院長が言わなくても回る医院」は、一朝一夕にはできません。しかし、知識と情報を医院全体で共有する土台があれば、スタッフの自走は着実に育っていきます。まずは無料相談・デモで、貴院の情報共有の現状をお聞かせください。

取材協力

倉田 友宏 先生

くらた歯科医院

院長

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